1. [誤り]空腹時に痛みが増強するのは十二指腸潰瘍の特徴である。本症例は胃角部の潰瘍であり、教科書にも「胃潰瘍では食後の心窩部痛が特徴」と記載されている。胃潰瘍の痛みは食後に増悪することが多く、空腹時痛は当てはまらない。
2. [正解]胃潰瘍による背中の皮膚の痛みは関連痛(放散痛)である。関連痛とは、内臓からの痛覚インパルスが脊髄後角で体性感覚神経と収束(convergence)するために、実際には内臓に原因があるにもかかわらず体表面の特定部位に痛みが投影される現象である。胃潰瘍では心窩部の内臓痛が脊髄分節を介して背部の皮膚に関連痛として放散する。教科書にも「十二指腸潰瘍では背部痛がみられることもある」と記載されている。
3. [誤り]体性痛は皮膚・筋肉・骨膜・関節包など体性組織の侵害受容器が直接刺激されて生じる痛みであり、局在が明確で鋭い痛みが特徴である。本症例は胃潰瘍が原因であり、背部の体性組織自体が障害されているわけではないため体性痛には該当しない。
4. [誤り]内臓痛は内臓の伸展・攣縮・虚血などにより内臓の侵害受容器が刺激されて生じる痛みで、局在が不明確で鈍い痛みが特徴である。心窩部の痛みは内臓痛に相当するが、「背中の皮膚にかけて」感じる痛みは関連痛として捉えるのが適切である。